【SPコラム⑨ 】生殖期、周産期への影響

最近、私たちは生殖期や周産期のライフステージ期間においてのオメガ3系脂肪酸の重要性に着目して研究を進めています。

「生殖期」や「周産期」はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、妊活、妊娠、出産、授乳などの期間のことを指し、次世代の子どもを育むための大きなイベントが続く時期になります。

オメガ3系脂肪酸は脳機能を正常に保つために必要であることをお話しましたが、実は、生殖や繁殖にも重要な役割を果たしています。
例えば、精子は頭部や尾部を左右に揺らして前に進みますが、この鞭毛のしなやかさはDHAの柔軟性が関係しています。体内のオメガ3系脂肪酸が少なくなると生殖器官のDHAも低下し、男性側は運動性の低い精子が増え、卵子に到達しにくくなることが考えられます。
また、女性側では、卵子に精子が到達しても卵膜が硬く受精が困難になることが予想されます。
めでたく着床、妊娠した後は、母体は胎盤や母乳を介して胎児に栄養を与えます。妊娠後期から胎児の脳が形成され、生後3歳ころまで大きく発達しますが、この時期に母体から十分なDHAがもらえないと脳機能の発達に大きな影響を与えます。母体は、胎児や新生児の分までオメガ3系脂肪酸を摂っておかないと自身が持っているDHAが低下し、さらに出産によるホルモンバランスの大きな変動が加わると、産後うつなどのメンタルに大きく影響することがあります。

20~40代はバランスの偏った食事や睡眠不足が続いても、すぐに目に見えるような身体の不調が出ることは少ないものです。しかし、妊娠、出産を考え、妊活をしようと思われている方や、これらのイベントがいつ起こってもいいような年齢層の方は、普段以上の摂取を心がけ体内のオメガ3系脂肪酸レベルをマックスにしておきたいものですね。


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授


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