【SPコラム⑫ 】妊娠・不妊

日本の2020年の出生数は84万人と過去最低を更新し、5年連続で100万人を割っています。
また、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.34と、これも5年連続で前年を下回っていることがわかりました。
これらには、女性の社会進出による晩産化や結婚をしない人の増加、また、出産適齢期とされる女性の人口そのものが減少していることも大きく影響しているようです。第1子出産時の母親の平均年齢は30.7歳と年々高齢化し、第2子、第3子を望む人は少なく、2人目以降は年齢による不妊治療を受ける人も多くなっています。

日本では、6組に1組が不妊に悩んでいると言われています。以前は、不妊の原因は女性側にあると思われていましたが、実際のところ、女性側は6割、男性側が3割で、それぞれの50%は原因不明であるといわれています。
現在のところ、女性の卵巣の老化を遅らせたり、卵子の質を改善する有効な方法はなく、年齢を重ねるにしたがって自然妊娠や生殖補助医療(ART)による出産率は低くなります。
しかし、実験動物では、オメガ3系脂肪酸(DHA)が豊富な餌で飼育した雌マウスの生殖機能は高齢期まで維持され、卵子の質を改善させることが示されています。
逆に、オメガ6系脂肪酸が豊富な餌で飼育した雌マウスは高齢期の妊娠率が非常に低くなり、短期間のオメガ6系脂肪酸摂取でも卵子の質が明らかに低下することが分かっています。
雄マウスの場合も、オメガ3系脂肪酸が低下すると精子の運動性が悪くなり、受精率が低下することが確認されています。海外の臨床試験では、ARTを受けている女性の血液オメガ3系脂肪酸が高いほど、妊娠や無事に出産する割合が高くなったという報告もあります。

これらのことを考慮すると、日本ではまだあまり浸透していませんが、妊活の一つとして女性も男性も妊娠に向けての身体作り(プレコンセプション)が重要となってきます。
その一つに、オメガ3系脂肪酸の積極的な摂取とオメガ6系脂肪酸の過剰摂取を控えることは、晩婚化した夫婦の妊娠、出産、また不妊治療の効果を得るためには、効果的かつ実用的な方法だと思われます。

 


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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