【SPコラム⑧】メンタルについて

脳は、私たちの生命を維持する呼吸や心拍、体温調節の他に、物覚えなどの記憶や学習、楽しいや悲しい、嬉しいなどの気持ちのコントロールもしています。気持ちの受け取り方や気分の持ち方の違いはその人の性格やその場の環境にもよりますが、実は、脳内のDHAが満たされているかどうかでその感じ方が大きく異なってしまいます。

正常な喜怒哀楽のような感情の動きは、脳内でセロトニンやドーパミンなどといわれる神経伝達物質の受け渡しがスムーズにされ、過去の記憶と照らし合わせながら感じることになります。神経細胞からの伝達物質の放出には、細胞膜の柔軟性が重要です。脳内のDHAが少なくなると、細胞膜の柔軟性が下がり、これらの伝達物質がうまく放出できない、受け取れない状態となって、些細なことでもイライラしたり、落ち着きがなく不安に陥りやすくなることが、ヒトやマウスの実験でもわかってきました。

コロナ禍の環境下では、「人との接触や会話が少なくなる」、「活動範囲が制限された空間で生活する」などの閉鎖的な生活環境を強いられ気持ちのバランスを崩しがちですが、脳内のDHAが十分足りているとそのようなストレスにも柔軟に適応することが期待できます。オメガ3系脂肪酸の摂取不足が人の心の動きや性格まで変えてしまう可能性があるのは少し驚きですよね。心穏やかに生活できるように、オメガ3系脂肪酸の摂取を心がけましょう。

 


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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【SPコラム⑦】認知機能・学習機能について

多価不飽和脂肪酸のなかでも二重結合を多く持つオメガ3系脂肪酸のDHA(二重結合は6個)は、固まりにくい柔らかい脂肪酸です。体内でDHAが豊富な臓器は、脳、網膜、精巣で、指令の受け渡しや精子の鞭毛の柔軟性など、細胞膜の柔らかさが必要になるところです。

 

脳組織は損傷すると回復が難しく、指令を出すことができない機能障害になりますが、脳内の脂質がオメガ6系に傾いてDHAが少なくなったバランスが悪い状態は、機能が壊れているのではなく、指令を出す細胞の膜が硬くなり、指令が出にくい、受け取りにくい環境になっているといわれています。そうすると、信号の量が少なくなったり、信号がうまくキャッチできなくなるので、物覚えが悪くなる、言葉がうまく出てこない、集中力が続かない、といった症状が出てきます。
眼の機能も同じように、外からの情報を信号にして脳に伝えますから、網膜のDHAが減ると、このような流れが滞る原因になります。

オメガ3系と6系のバランスの偏りは、臓器の働く環境が良くないだけで、組織自体の機能は壊れていませんから、バランスさえ整えれば正常な状態に戻す、近づけることができます。
ただ、脳の脂質の入れ替えは、他の臓器や血液に比べてとてもゆっくりなので時間が必要です。気長に、3ヶ月から半年を目安に、オメガ6の摂取を控えて、積極的にオメガ3を取ることを続けてみましょう。まずは、肌や髪などの身体表面に潤いが戻り、血液の中性脂肪の値が落ち着いてくると思います。そして、少し時間をかけて脳も理想のバランスに近づけて環境を正常に戻していきましょう。

 


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【SPコラム⑥】脳機能の影響について

「脳」と聞くと、漠然としたイメージで、とても大切な働きを担う臓器と思う人が多いと思います。物事を考えたり、手足を動かしたり、無意識ですが生命を維持するために内臓を動かす指令を出したり。
では、そんな大事な働きをしてくれる「脳」は何でできているのでしょうか? たんぱく質?炭水化物? 水分を除くと実に65%が脂質で、他の臓器に比べて脂質の割合が多く、とても柔らかい臓器なのです。絹ごし豆腐よりも柔らかい感じです。意外でしたか?

その柔らかさは多価不飽和脂肪酸の多さにあります。
特にオメガ3のDHAとオメガ6のアラキドン酸です。

食生活でオメガ6が不足することはあまり考えられませんが、オメガ3を多く含む食材は限られているので、意識しないと不足気味になることは簡単に想像できると思います。そのような食生活を続けていると、脳内のDHAも減少し、本来の機能を充分に発揮できない状態になってしまいます。その一例が、物忘れや認知症であったり、イライラや落ち込みなどのメンタルにも影響したり。今年はコロナ禍で外出を控え、普段以上にストレスが溜まり、気が滅入る方も増えているようです。世の中の環境がガラリと変わって、その変化になかなか対応できていない毎日ですが、脳内の環境は健全な状態が保てるように、いつもオメガ3が満たされている必要があります。

来月からは脳機能とオメガ3の関係について、もう少し細かくお話していきたいと思います。


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【SPコラム⑤】運動と筋肉について

今年は新型コロナウィルス感染予防のため、外出の自粛で運動量が減っている方が多いのではないでしょうか? さらに、寒さも重なって、ますます運動する機会は減ってきそうです。このような生活で気になるのが体力の低下や筋肉量の減少です。これらを予防・改善させるには、良質なタンパク質をとって運動することが一番なのですが、それに加えてオメガ3を摂るとより有効な働きをしてくれます。

【働き①】
細胞膜の柔軟性が改善されることから、赤血球や血管壁が柔らかくなり、血流の改善や血圧が安定化することで酸素の運搬力が向上し、より楽に運動することができるようになります。
【働き②】
炎症を抑制することから、筋肉痛や疲労が緩和され、可動域(腕や足など体を動かせる範囲)が広くなり、大きな動作ができるようになります。

最近の私たちのマウスを用いた実験では、オメガ3が動かしていない筋肉量の減少を抑えたり、筋肉量の増加を助けてくれるなど、高齢者の方ににみられる「フレイル」にも効果が期待できるような結果も観察されています。

ちょっとした段差につまずいたり、転倒しないためにも、まずはオメガ3で身体の環境を整えて、より効率の良い運動をし、コロナ自粛による体力の衰えを回復させましょう!


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【SPコラム④】糖尿病

日本の糖尿病患者数は約950万人で、予備群を含めると約2050万人といわれています。
そのうちの90~95%の方が2型糖尿病です。この2型糖尿病患者数の増加は、「魚介類が中心であった日本食」から、「肉類や脂質の多い欧米食」に変化していったことで、高カロリーや高脂肪な食生活に、運動不足が重なって、血糖値を下げる働きのホルモンであるインスリンの分泌量や効き具合が低下したことが原因と考えられています。

最近、オメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)には、脂質でありながら、インスリンを分泌するすい臓の働きを維持する効果があることがわかってきました。
高脂肪の餌で飼育したネズミにオメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)を与えると、血糖値の上昇が緩やかになったり、2型糖尿病患者や肥満の人にオメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)を3ヶ月間取ってもらうと、空腹時の血糖値やインスリン値が良好になったという報告があります。
また、日本だけでなく世界でも、魚をよく食べる食事スタイルが糖尿病の危険性を低下させるという発表がされています。

オメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)は、「柔らかいアブラ」と説明したように、オメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)がすい臓のホルモンを分泌する細胞の膜に充分に行き渡っていると、細胞膜の柔軟性が高まり、インスリン等の血糖値上昇を抑えるホルモンの分泌を円滑にしていると考えられます。

体重の増加や健康診断などでの血液検査の血糖値が気になりだしたら、身体を動かすことはもちろんですが、オメガ3脂肪酸(ω3系脂肪酸)が多く含まれる食材を意識して食事スタイルを変えることをおすすめします。


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【SPコラム③】循環器系への影響

「循環器系」とは、血液やリンパ液を循環させる器官の通り道、すなわち、心臓、動脈、静脈、リンパ管などを指します。
血液は、酸素や栄養素、ホルモンを各組織に運び、二酸化炭素や老廃物を回収してくれるのはもちろん、病原菌を退治する場でもあります。
つなぎ合せると地球2周半にもなる血管に中性脂肪が溜まって血液の粘度が上がったり、血管が固くなってしまうと身体の先端まで血液を行き渡らせるために、これまで以上の圧力が必要となります。その圧力を血管壁が吸収できなくなると、血管の崩壊にもつながってしまいます。 また、血液中の赤血球は、自身よりも小さい血管を通り抜けなければなりません。赤血球の柔軟性が損なわれても血管が詰まりやすくなります。
これらが、高血圧症、動脈硬化と言う重篤な疾患のリスクを高めることになります。また、この状態が続くと心臓にも負担がかかり、心臓の機能に関わる疾患のリスクが高まります。

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これら循環器系疾患には、オメガ3系脂肪酸(ω3系脂肪酸)がとても重要な役割を果たしていることが、グリーンランドのイヌイットの食事がきっかけでわかっています。
彼らの主食であるアザラシなどの海獣の脂質は、動物性脂質でありながら、魚介類をしっかり捕食しているので、豊富なオメガ3系脂肪酸(EPA、DPAn-3、DHA)を含んでいます。オメガ3系脂肪酸(ω3系脂肪酸)は、血液中の中性脂肪を下げ、抗血小板凝集作用(血液を固まりにくくする)があります。俗に言う、血液サラサラ効果です。最近では、動脈硬化の進行を抑制する薬としても使用されるようになりました。

このように、オメガ3系脂肪酸は、循環器系の機能の維持に働いてくれるのです。


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