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健康コラム

【油博士コラム⑬】トランス脂肪酸

不飽和脂肪酸には、「二重結合」という不飽和状態の構造があります。二重結合を含む脂肪酸には、構造の微妙な違いからシス型とトランス型という脂肪酸が存在します。
一般の食品中に含まれる天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型です。例外として、牛などの反芻動物の胃内の微生物によってトランス型の脂肪酸が作られるので、牛肉や羊肉、乳製品には天然のトランス脂肪酸が含まれています。

今、社会的に問題になっているのは、オメガ6系脂肪酸のリノール酸を多く含む植物油の二重結合を工業的に部分解放して、粘度が高く、扱いやすい油脂に加工する際にできるトランス脂肪酸です。
こうして作られた油脂がマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどで、これらを原材料にして製造されるのが、パンやケーキ、クッキーなどの洋菓子、加工食品になります。

トランス脂肪酸を含む食品の安全性については、体内で代謝されにくく脂質異常症を引き起こすため、「体に良くない」「心疾患のリスクを高めるのではないか」と言われ、欧米ではトランス脂肪酸のできる可能性がある加工処理方法の使用が禁止されています。
日本の厚生労働省では、1日の摂取量を2 g程度までとしています。

まだ研究途中でもあるのではっきりとした結論は出ていませんが、トランス脂肪酸を含む食品には、オメガ6系脂肪酸も多く含まれていることから、健康リスクへの影響を避けるためにも、できればあまり摂らないように心がけたいものです。


◆あぶら博士プロフィール

*守口 徹 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授

日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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