【SPコラム⑦】認知機能・学習機能について

多価不飽和脂肪酸のなかでも二重結合を多く持つオメガ3系脂肪酸のDHA(二重結合は6個)は、固まりにくい柔らかい脂肪酸です。体内でDHAが豊富な臓器は、脳、網膜、精巣で、指令の受け渡しや精子の鞭毛の柔軟性など、細胞膜の柔らかさが必要になるところです。

 

脳組織は損傷すると回復が難しく、指令を出すことができない機能障害になりますが、脳内の脂質がオメガ6系に傾いてDHAが少なくなったバランスが悪い状態は、機能が壊れているのではなく、指令を出す細胞の膜が硬くなり、指令が出にくい、受け取りにくい環境になっているといわれています。そうすると、信号の量が少なくなったり、信号がうまくキャッチできなくなるので、物覚えが悪くなる、言葉がうまく出てこない、集中力が続かない、といった症状が出てきます。
眼の機能も同じように、外からの情報を信号にして脳に伝えますから、網膜のDHAが減ると、このような流れが滞る原因になります。

オメガ3系と6系のバランスの偏りは、臓器の働く環境が良くないだけで、組織自体の機能は壊れていませんから、バランスさえ整えれば正常な状態に戻す、近づけることができます。
ただ、脳の脂質の入れ替えは、他の臓器や血液に比べてとてもゆっくりなので時間が必要です。気長に、3ヶ月から半年を目安に、オメガ6の摂取を控えて、積極的にオメガ3を取ることを続けてみましょう。まずは、肌や髪などの身体表面に潤いが戻り、血液の中性脂肪の値が落ち着いてくると思います。そして、少し時間をかけて脳も理想のバランスに近づけて環境を正常に戻していきましょう。

 


◆あぶら博士プロフィール(詳しくはこちら

*守口 先生(薬学博士)

麻布大学 生命・環境科学部 教授
日本脂質栄養学会 理事長

 

 

 

 

 

*原馬 明子 先生

麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授

 

 

 

 


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